ラグジュアリー・ブランドのトップ10 ジュエリーの目利きが選んだウィッシュ・リスト

 

世界有数のブランドを主とした煌めくハイ・ジュエリーの収集を夢見たことがありますか?クリスタ・ヴァン・エールデ MA MLitt FGA DGAが、ハイ・ジュエリー・ブランドのトップ10から、典型的な作品を見ていきます。

CARTIER
カルティエ

ジュエリー愛好家は皆、パンサーまたはトゥッティ・フルッティの作品に憧れます。ブランドのアイコンであるパンサーは、カルティエの伝統に根付いた、ラグジュアリー、エレガンス、そして強さに溢れています。つやのあるブラック・オニキスとともにセットされたダイヤモンドを好きにならないはずがありません。1933-1970年に活躍したカルティエのアート・ディレクター、ジャンヌ・トゥーサンの影響を受けて作られたこのパンサーは、ウィンザー公爵夫人、ウォリス・シンプソンのお気に入りとなりました。彼女はこのジュエリーを虚勢と誇りをもって華やかに装いました。

Cartier Tutti Frutti Necklaceカルティエのトゥッティ・フルッティ・ネックレス。写真提供:カルティエ。

刺激のある色であふれたトゥッティ・フルッティは、アール・デコの時代を風靡したモノクロのスタイルから離れ、次の時代へのステップとなりました。そして、彫刻を施した宝石とヨーロッパの熟練した技術の融合は、まさに東洋と西洋が出合った素晴らしい例となりました。ブランドのアイコンであるこのスタイルは1901年にピエール・カルティエによって作られ、1920年代になっても人気が衰えることはありませんでした。そして、このスタイルがトゥッティ・フルッティとして知られるようになったのは1970年代以降のことです。

HARRY WINSTON
ハリー・ウィンストン

「ダイヤモンドの王」、「スター達のジュエラー」と呼ばれるハリー・ウィンストンは、安全上の理由により若かりし日の写真が存在しません。それはいつも彼が大きな宝石を運んでいたからです!ウィンストンが扱った石として有名なものには、ニューヨークの本社へ普通の書留郵便で送った726カラットの原石、ヨンカー、かつてルイ14世、マリー・アントワネットやヘンリー・ホープ卿が所有し、現在ワシントンD.C.のスミソニアン・コレクション収蔵されている、45.52カラットの稀少なブルー・ダイヤモンド、ホープ・ダイヤモンドがあります。

ハリー・ウィンストンと彼の先駆的なデザイナーは作品の中央に宝石を置き、金属セッティングがどんな形であれ、石の価値を損なわないようにしました。私にとって理想的と言えるものはハリー・ウィンストンの特徴でもある「クラスター」の技術で、時代を超越した、唯一、魅力的な「ウィンストン・ルック」をもつジュエリーです。

VAN CLEEF & ARPELS
ヴァン・クリーフ&アーペル

ジュエリー・ファンにとって、理想的なヴァン・クリーフ&アーペルの作品は、ミステリー・セッティング-インビジブル・セッティングとしても知られている-が施されたバレリーナ・ブローチでしょう。1933年に特許権を得たミステリー・セッティングは、石を魔法のように浮かせ、爪や台をもたずに宝石を留めることができます。ミステリー・セッティングは現代のカットやセッティング技術より前に作られました。ダンサーが無数の時間を使って芸術を極めるための訓練を積むように、このセッティングもまた製作には数か月を必要とするので、どちらも拍手喝采に値するのです!

ウィッシュ・リストに欠かせないもう一つの作品は、ジップ・ネックレスです。これは精密にできたコンバーチブル・ジュエリー(ネックレスまたはブレスレットとして形を変えて着用することができます)であり、まさに宝石工学の妙技です。このジュエリーはウォリス・シンプソンから、アルフレッド・ヴァン・クリーフの娘でメゾンのアート・ディレクターのルネ・ピュイサンに対して依頼されたものでした。文字通りジッパーのように動くネックレスを作るという挑戦の結果、1950年に初めて製作されました。これは、今日のヴァン・クリーフ&アーペルのコレクションの中でも傑作として知られています。

Zip Necklaceヴァン・クリーフ&アーペル製作、ジップ・アンティーク・ネックレス。イエロー・ゴールド、ラウンド・ダイヤモンド、コーラル、プリンセス・カット・サファイア、ルベライト、エメラルド・ビーズ、合計44.75カラットの16個のエメラルド・カット・エメラルド(ジンバブエ産)

BULGARI
ブルガリ

コレクションは、ブルガリのセルペンティ・ブレスレットなしでは完成しません。ブルガリは、ギリシャをルーツとし、ローマに住んでいたソティリオ・ブルガリによって、1884年に設立されました。そのため、すべてのブルガリ・デザインにギリシャ・ローマの神話と文化の影響が色濃く感じられます。蛇はブランドを象徴するものであり、知恵、活力、誘惑を意味しています。

チューボガス(ガスパイプ)・テクニック、つまり、はんだ付けを必要とせずにスプリングを隠す技術は、ローマ人の装飾方法であるより糸を作る技法から着想を得ました。この技法により、宝石で飾ったしなやかな蛇が手首のまわりに巻きつく、または肩の上で寄り添うようにできています。ブルガリの大ファンであるエリザベス・テイラーは、セルペンティの1961年モデルをクレオパトラの映画で着けていました。それ以来、ブルガリのセルペンティは、絶えずその皮を脱いで蘇ってきたのです。

DAVID WEBB
デイヴィッド・ウェッブ

デイヴィッド・ウェッブの動物ブレスレット、特にブランドの象徴であるシマウマのモチーフは、ウィッシュ・リストに入れる価値があります。デイヴィッド・ウェッブは、最も重要なアメリカのジュエラーの一つで、動物の王国を特徴とした作品群を作りました。カエル、猿、キリン、象のモチーフは人気があります。ウェッブは古代が好きで、インカ族を研究し、シリア、トルコ、エジプト、中国、アフリカから装飾品を収集しました。

彼は、「私が作った作品はミュージアム・クオリティであり、その作品にインスピレーションを与えたオリジナルと同じように存続すると信じている」と語りました。ウェッブは、昼も夜も使えるような、用途が広く、テクスチャーとボリュームのあるジュエリーを作ることを望みました。彼には、古代の意匠を現代にアレンジし、大胆で、幾何学的、建築的なデザインを作る情熱をもっていました。

GRIMA
グリマ

アンドリュー・グリマは独学でジュエリーを学び、最初の作品で彼の想像力を発揮しました。彼は間違いなく、20世紀の偉大なジュエリー・デザイナーの一人であり、グリマのオーガニックで、身に着けることができる素晴らしいデザインは多くの人々に影響を与えました。彼は珍しい原石(ファセットが付けられていない)を好み、ダイヤモンドはスポットライトを当てるためではなく、大胆な作品を強調するために使用しました。

Andrew Grima Jewellery Designs Gem A Blogアンドリュー・グリマによるアゲート・ブローチ(左)とアクワマリン・リング。写真提供:グリマ・ジュエリー。

グリマの熟達した技を十分に鑑賞するには、作品を眺め、実際に着用する必要があります。グリマは多くの著名なファンを誇り、マーガレット王女殿下、アン王女殿下、ジャッキー・ケネディ・オナシス、ウルスラ・アンドレス、グウェンドリン・クリスティ、マーク・ジェーコブスなど、枚挙にいとまがありません。女王は1966年にフィリップ殿下から贈られたゴールド、彫刻を施したルビー、ダイヤモンドのついたグリマのブローチをよく身に着けています。

JAR
ジャー

JARはジョエル・アーサー・ローゼンソールの略です。彼は「すべてのことが、自分を大きく見せ、有名にしようと仕向けますが、私の直観とレーダー、利己主義と傲慢、何よりもまず幸せに対する情熱が、私に小さいままで、おとなしく、したいことをしなさい、誘惑されてはいけません、そそのかされてはいけません、ただ自分がこうあるべきと思う方法で行いなさいと語りました」と言っています。JARはブルガリで働いた後、1978年に自身のメゾンをパリのヴァンドーム広場に開きました。

彼と接触することができるのは個別対応の店の入り口からのみで、わかりにくく、プライバシーを守ることで有名です。彼の活き活きとした動植物のデザインは自然からインスパイアされ、驚かざるを得ないものです。彼はパヴェ技法のマスターであり、無数の小さなファセット石を互いに隙間なく並べて、プラチナや宝石の色を強調するように作った金属合金にセットします。JARは年間で約100のジュエリーを製作しており、彼の作品はオークションで驚異的な売値が付きます。

BOUCHERON <br/ブシュロン>

ブシュロンは、熟達した技術で創造的なデザインを具現化したユニークなジュエリーを作ります。女王陛下のコレクションの多くを占め、これなしでは語れないブシュロンのティアラに私は心を奪われます。

Boucheron Baïkal necklaceブシュロンのバイカル・ネックレス。写真提供:ブシュロン。

ツァー・アレクサンドル3世、パティアラのマハラジャ、レザー・シャー・パフラヴィ、エジプトのファリダ女王、ヨルダンのレーニア王妃もまたブシュロンを好みました。残念ながら現在は所在不明ですが、1910年製作のウェーブ・ティアラは葛飾北斎の『神奈川沖浪裏』の影響を受けたといわれています。いつの日かこのティアラを目にすることができるでしょう。

SUZANNE BELPERRON 
スザンヌ・ベルペロン

ベルペロンは決して作品に署名しなかったので、認識はできるものの、収集の際には慎重を要します。そしてまた、あなたはカール・ラガーフェルドのような、ベルペロン・コレクションを所有する人たちと競わなければなりません。ベルペロンは創業者の未亡人、ジャンヌ・ボワヴァンの下、ルネ・ボワヴァンのメゾンで働き、その後の1932年にペルナール・ヘルツのメゾンへ移り、芸術・技術責任者になりました。

彼女の作品は自然に対する深い感謝と慈しみを表し、様々な文化、つまりアフリカ、カンボジア、ケルト、エジプト、インド、マヤからモチーフを得て、通常、貴石とハンマーで打ったゴールドを組み合わせて使用しました。彼女を支持した有名人には、ジャン・コクトー、エルザ・スキャパレリ、ウィンザー公爵とその夫人、デイジー・フェローズ、フレッド・アステア、イマーム・ハンが挙げられます。ベルペロンのジュエリーはいわば、移動祝祭日(どこにでも持ち運べる豪華な饗宴)であり、20世紀前半のジュエリー界で手腕を発揮した数少ない女性の1人の手から生まれたものです。

TIFFANY & CO. 
ティファニー・アンド・カンパニー

もう1つコレクションに欠かせないのは、ジャン・シュランバージェによるジュエリーです。彼はエルザ・スキャパレリのためのボタンとコスチューム・ジュエリーのデザイナーからキャリアをスタートしました。彼はティファニーが作品にサインを刻むことを許した4人のジュエラー(他には、パロマ・ピカソ、エルサ・ペレッティ、フランク・ゲーリー)のうちの1人です。彼の詩的でウィットに富んだデザインは宝石やエナメルを用いた鮮やかな色を特徴とし、彼の作る生き物は活気に満ちて豪華です。

この記事は「Gems&Jewellery」 Winter 2018に掲載されたものですここをクリックするとオンライン版がご覧いただけます。.

Gem-Aの ワークショップ ショート・コースで宝石学の旅をはじめませんか? 宝石学ファンデーションコースについてはこちらをご覧ください。 

表紙の写真:カルティエのパンテール・ブレスレットとアンドリュー・グリマのアクワマリン・リング。写真提供:カルティエ、グリマ・ジュエリー。  

 

問い合わせ

お探しの情報が見つからない、またはご質問等は、education@gem-a.com までEメールにてご連絡ください。